著者
瀬戸口 孝夫
出版者
国際組織細胞学会
雑誌
Archivum histologicum japonicum (ISSN:00040681)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.149-159, 1959
被引用文献数
1

成熟赤腹〓〓の水晶体摘出後, 水温24-27度の下に9-35日飼育したものを材料として, Gomori 改良法により, 再生過程に於ける水晶体の酸性フォスファターゼの状態を検索して次の結果を得た.<br>1. 酸性フォスファターゼは再生の前半期に於ては中等度の活性を示し, 線維細胞への分化過程に於て予定水晶体後極附近に活性が高く, 線維細胞の apical では弱い. 再生の後半期では, 活性は分化の進むにつれて次第に減弱し, 再生末期では水晶体上皮に痕跡的反応を残すに過ぎない.<br>2. 線維細胞では酸性フォスファターゼは Golgi 領域に蓄積を示すように思われる.<br>3. 酸性フォスファターゼは核酸, 殊にRNAの消長と平行し, 再生過程に於て, 細胞の増殖, 分化及び成長に伴う細胞内の核蛋白質の代謝にとって重要な役割を演ずることが推察される.