著者
瀬戸山 雅人 嶋田 正和
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.302, 2004 (Released:2004-07-30)

昆虫において、一見すると人間の脳のように高度な情報処理能力がなければ実現できないような精錬された行動を示すものがいる。発表者は、その行動の裏にある「昆虫でも実現できるようなシンプルな情報処理によるシンプルな行動決定のルール」の観点から、ヨツモンマメゾウムシの産卵時にみられる均等産卵分布について、どのような行動決定のルールがこの分布をもたらしているのかを研究してきた。雌のヨツモンマメゾウムシは、すでに卵を多く産みつけられた豆に対して産卵を避け、卵のついていない豆を選んで産卵することにより、豆当りの卵数が均等になる。その結果、豆内での幼虫の種内競争が均等に軽減される。本研究では、卵の均等分布をもたらすこの行動がどのような知覚情報をどう用いて実現されているかを、ニューラルネットワークモデルを利用して解析した。具体的には、単純なフィードフォーワード型のニューラルネットワークモデルを用意して、これに実際のヨツモンマメゾウムシの行動パターンを教師信号として誤差逆伝播法を用いて学習をさせた。このときヨツモンマメゾウムシが意思決定に用いている情報として、現在いる豆の卵数、1つ前の豆の卵数、2つ前の豆の卵数、蔵卵数、前回の産卵からの経過時間、他の雌との遭遇回数を使用した。ニューラルネットが教師信号を十分に学習したのを確認した後は、モデルの汎化性のテストを行った。汎化性のテストは、学習済みのニューラルネットを搭載した仮想のヨツモンマメゾウムシを豆を配置した仮想環境に置き、その環境で均等産卵が達成できるかで評価した。汎化性のテストの結果としてモデルが産卵行動の特徴を実現できていることが確認されたら、ニューラルネットの中で各情報がどのように重み付けされているかを解析した。