著者
烏 日哲
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.145, pp.1-12, 2010 (Released:2017-03-21)
参考文献数
9

本研究は,中国語を母語とする上級日本語学習者と日本語母語話者が絵本の説明を行うときに現れる語り方の違いを明らかにすることを目的としている。調査材料としては,ある種の文化リテラシーを必要とする漫画を避け,またダイナミックな談話展開を表現する語りの姿を知るために,字のない絵本を用いた。具体的には,絵本にかかれている絵と,話し手の発話とがどのくらい一致するのかという「語りと絵本の一致度」に着目し,個々の発話の表現的特徴を探った。その結果,語りの最初と最後に物語そのものの性格を解釈したり,ストーリーに対する感想を述べたりする点で,母語話者と異なることが観察された。また,学習者は絵本にかかれていない内容,特定の絵と照合できない内容や表現を語りに加えることが多く,解釈を含める傾向が強いことがわかった。