著者
橋本 賢 森井 沙衣子 照井 真紀子 村上 洋子 奥村 万寿美
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-98, 2006-03-31

食事摂取量調査は,管理栄養士にとって患者の食生活を把握する上で非常に重要な項目である.しかし,分析する者の経験や能力の差により正確な値との間に誤差を生じる.そこで食事摂取量調査の技術向上のために,どのような教育の実施が望ましいかを検討するために,IT (Information Technology) を用いた摂取量解析のプレテストを行った.管理栄養士養成施設の3年生男子10人,女子76人を対象とした.5cm方眼のランチョンマットに配膳された「ごはん,鮭の塩焼き,肉じゃが,ほうれん草の胡麻和え,若布のみそ汁」をデジタルカメラで撮影し,その画像から食材と分量の読み取り分析を実施した.また画像からの食事摂取量の評価で難しかった点(問題点)と技術習得のための改善点を学生に提示させた.その結果,食材の分量を全体的に過少評価し,また総エネルギー量を実際のエネルギーより少なく見積もる方向性が認められた.さらに調味料分量においても同様の結果が認められた.塩分量においては,実際の塩分量と比較して,メニューの目分量,またそれぞれの料理の材料分量を栄養価計算した塩分量と比較して,多く見積もる方向性が認められた.さらに学生が難しかったと申告した項目を分類したところ,難しかった点には,使用食材の分量を把握することが一番多く,次いで調味料の分量を把握すること,食器から重量を推定すること,食材名(分類や部位)を判別するが上位を占めた.一方,問題を改善するための今後の課題としては,スケールを用いた食材量測定が最も多く,次いで1食あたりの食材分量,調味料分量%を把握する,およびレシピであった.撮影画像から食事摂取量調査を行うにあたり,食材料自体の分量の把握と常用量の把握が重要であると考えられた.また,2次元画像から材料の大きさを立体的に把握する技術も必要となることが示唆された.