著者
熊澤 紅実
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.197-207, 2019

<p>本事例は,スクールカウンセラーが行った,母親との過剰な愛着を持つ男子高校生との面談過程の報告である。男子高校生が語る不安や学校不適応感の背景には,青年期の分離―個体化期の課題である母からの精神的離脱と個の自立,エディプス・コンプレックスの克服,超自我の形成が問題として考えられた。12回の時間制限カウンセリングで,それらの克服と男子高校生の精神的自立を目指して援助を行った。また,母への強い愛着がある男子高校生に対して,Co. は発達促進的な新しい対象(new object)(小此木, 1976)の役割を意識し,精神的成長を援助した。本事例では,青年期の分離―個体化に時間制限カウンセリングが果たした効果を考察する。</p>