著者
熊谷 高幸
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-10, 1986
被引用文献数
1 3

自閉症児は、すでに言語を有する水準に至っても、種々の文法障害を示すと言われている。本研究では、軽症の自閉症児を被験児として、ルリヤの神経言語学的分析法を用い、その言語障害の特徴を分析することにした。ルリヤによれば、力動失語症患者は動詞想起と文構成に、意味失語症患者は名詞想起と論理・文法的理解に障害を示す。これら二種の対立的な言語障害のうちどちらが自閉症児の言語障害に類似したものとなっているだろうか。実験の結果、自閉症児群は群全体として見ると普通児群と比べて力動失語症患者に類似した障害の内容を有することが明らかとなった。また、知能障害児群の被験児の一部は自閉症児群と同様の反応パターンを示し、群全体としては、上記二群の中間に位置する結果となった。