著者
片山 和子
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.239-245, 1987-04-15

いつの時代にも子どもたちは年ごろになると内から名状し難く沸き上がってくるエネルギーにつき動かされ,たじろいできました.思春期です.性の目覚めが生命感となって外にあふれ,同時に心の奥底まで目を向けようとする内向性も育っていく時期.異性に対して,強い関心と羞恥心が同居し,大人と子どもの狭間で自分をもて余しながら,試行錯誤していく時期でもあります.今までの自分の物差しでは計れない初めての経験に,時に深く傷つくこともありますが,それも純粋さゆえ,といやされて来ました. ところが,この思春期を自分のものとできない子どもたちがいます.彼らは様々な大人の事情の犠牲となったり,"本人のための受験戦争"という名目のために,思春期に表面化するものは管理され,目をつぶらされ,封じ込めようとまでされ,思いっきり大人になるチャンスをつかめないまま時を過ごしていきます.