著者
片山 和男
出版者
愛知学院大学
雑誌
愛知学院大学論叢. 心身科学部紀要 (ISSN:18805655)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.101-106, 2007-03-31

強迫性障害は,強迫観念・強迫行為が反復・持続し,時間の浪費や回避行動のために日常生活や人間関係が困難になることを特徴とする精神障害である.治療については,薬物療法と行動療法の有効性がわかっている.行動療法では,エクスポージャーが用いられることがある.本稿では行動療法を中心とした症状軽減を目指す立場から,確認の強迫症状などの生活に支障をきたす安全確保行動を,どのように生活に支障をきたさない新しい適応的な安全確保行動に置き換えることができるか,事例を通して検討した.治療目標としては,行動面の「ひとりで外出する」と感情面の「情緒の安定」の二つを設定した.まず信頼的な治療者患者関係を構築したうえで,行動面は段階的なエクスポージャーを用いた行動的アプローチにより,強迫症状が改善した.感情面は,筋弛緩法,自律訓練法と具体的検討に基づいたフィードバックが奏功した.さらに過程が進むにつれて自尊感情が高くなった.