- 著者
-
片山 憲一
- 出版者
- 公益財団法人 アジア成長研究所
- 雑誌
- 東アジアへの視点 (ISSN:1348091X)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.1, pp.26-36, 2014 (Released:2020-04-03)
- 参考文献数
- 16
私は北九州市役所で長い間,地域開発の仕事に携わり北九州地域の発展過程,とりわけ産業の発達と交通の変遷,交通の拠点性と都市の盛衰に接し,これらが複雑に絡み合って今の北九州市が形成されてきたことに興味をもった。また,歴史的な街ではなかった地域が都市に成長するには地理的な要因に加え,国の地域開発計画などの何らかのきっかけと,結果として具体的な国のプロジェクトを地域に導入することが都市の発展に大きな役割を果たしてきたことを強く感じた。
特に,公共財の道路や港湾などは,その整備が国の予算に大きく左右される。北九州の都市形成は筑豊地域の石炭の存在に加えて官営八幡製鉄所立地に始まったといわれているが,北九州市の都市形成過程に交通がどのような役割を果たしたかを,一度立ち止まって整理しておくことは有意義と考えた。
ここでは鉄道,路面電車,バスといった都市内の交通機関や市街地形成に寄与した道路などに着目し,北九州における交通と都市の発展のかかわりについて明治期から現在までを,主なエポックで区分しながら整理し,考察を試みた。
市役所の先輩である出口隆氏が平成11 年にまとめられた博士論文「北九州工業地帯の形成と鉄道の役割に関する研究」(出口,1999)の中で,この問題について明治から大正期の北九州創成期における鉄道を中心とした状況について論じておられる。参考としたい。