著者
兼松 宜弘 大田 裕介 三尾 海斗 片岡 幸大 藤根 寛也 小川 智司 加藤 翔紀
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第34回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.81, 2018-07-01 (Released:2018-11-22)

本研究は,東山動物園のニシローランドゴリラ5頭の個体間関係の推移を通じ,個々のゴリラの成長過程や動物園の飼育環境下にあるゴリラ群の社会構造の特徴を明らかにすると同時に,今年で4年目を迎えた関高校の継続的な活動の一環として,貴重な動物園ゴリラ群の長期的なデータの確保に努めることも大きな目的としている。東山動植物園のニシローランドゴリラ群は,オトナオス(シャバーニ)とオトナメス2頭(ネネ,アイ),それぞれが生んだオス・メスのコドモ2頭(キヨマサ,アニー)の計5頭からなる。具体的な手法としては,一定時間内における個体間の接触の回数や種類,個体間のおおよその距離を,生徒がそれぞれ担当の個体を決めてチェック用シートに記録し,個体間関係に関する分析と考察を試みている。昨年度の研究では,核オスによる特定の個体(ネネ)への執拗な「いじめ行為」の消長や他の個体の反応に注目し観察を行った。今年度も引き続き,核オスによる「威嚇」「いじめ」の変化,他の個体の反応を追っている。他の霊長類と比べると,ゴリラはおとなしく行動もゆったりとしている。成長も緩やかであり,短期間で変化することはない。ゴリラの行動観察は,様々な制約のある高等学校部活動の研究対象としては,必ずしもふさわしくないのかも知れないが,見方を変えれば,長期的なスパンでの継続的観察が実現できれば,動物園ゴリラ群におけるコドモゴリラから若オスへの性成熟の過程のデータが確保できるため,この研究の大きな意義や必要性が生まれてくる。同じく,いまだ若オス的な行動をとるシャバーニが,成熟した核オスへと変貌を遂げるのか否か,コドモメスのアニーがどのような過程を経てオトナメスへと成長するのかについても,長期にわたる行動観察によって,その過程を明らかにできると考える。なお,本研究は,本校SGH活動の一環であり,中部学院大学竹ノ下祐二教授の助言を受けつつ進めている。