著者
神田 直之 王 瑩 片岡 憲昭 山田 龍太 今泉 洋 狩野 直樹
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.717-728, 2015
被引用文献数
5

2011年3月12~15日に,福島第一原子力発電所事故が起こった。この事故は,近県に放射性物質汚染を引き起こした。本研究では,汚染された地域に及ぼすこの事故の影響を明らかにするため,新潟市と福島県における幾つかの湖沼の湖沼水と湖沼泥を採取した。湖沼水においては,固体高分子膜電解(SPE)装置によりトリチウム(T)比放射能の濃縮を行い,T-比放射能を液シンで測定した。このように測定したT-比放射能に基づき,環境に及ぼすこの事故の影響を調査した。それと同時に,湖沼泥中の放射性セシウムの比放射能も測定した。その結果,福島第一原子力発電所事故が近くの湖沼(例えば,福島県や新潟市)に及ぼす影響が定量的に明らかになった。以上のことから,新潟市に及ぼすこの事故の影響はかなり小さく,事故は徐々に収束していることがわかった。