著者
片野 洋平
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.21-30, 2016 (Released:2017-10-10)
参考文献数
26

本研究は,過疎地域において人々がスギ・ヒノキなどの人工林を適切に間伐する行為に着目し,過疎地域の自治体に人工林を所有する在村者と不在村者それぞれの人工林の管理行動を規定する要因を明らかにすることを目的とする。本研究は,人工林管理行動のうち,特に人工林を管理しない人々の行動に着目し,その規定因を明らかにした。鳥取県日南町の在村者,不在村者から得たデータを用い,それぞれに対し回帰分析を行った。分析の結果,第一に,「人工林面積」および「森林の場所に対する認知」,第二に,在村者の「登記」,第三に,不在村者の「教育歴」 ,「地元地域との交流」,「森林との距離」が人工林非管理行動に影響を与えている可能性を明らかにした。本研究により,人工林非管理行動に対する経済的要因と場所への認知に対する要因の重要性を確認すると共に,在村者と不在村者では異なる要因が同行動に対し影響を与える可能性を確認した。過疎自治体や森林組合は,一方では,在村者,不在村者双方に対して同一の要因からなる施策を講じ,他方で,在村者,不在村者それぞれに応じた施策を行うことによって,人々の森林管理に影響を与える可能性を示唆する。