著者
牛窪 隆太
出版者
言語文化教育研究学会
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.13-26, 2015-12-30 (Released:2016-03-21)

近年,「日本語教育学」をめぐって,従来の日本語教育のあり方を批判的にとらえ,日本社会に位置づけ直そうとする議論が盛んになっている。国内大学のグローバル化戦略にともない,日本語教育に期待される役割も,今後拡大していくことが予想される。日本語教育を日々実践しているのが,現場の教師であることを考えれば,従来の日本語教育のとらえ直しとは,現場の教師それぞれが,自身の教師としての役割を再考しなければ,達成されないものである。本稿では,研究者であり教師でもある筆者の立場から,現場の日本語教師がおかれた教師環境を検討し,その問題点を指摘する。そのうえで,日本語教育で主張された「自己成長」論を批判的に検討することから,現場の教師が,「フリーランス」の専門家であろうとすることによって生まれる拘束性から,お互いを逸脱させていくための「同僚性」構築を,日本語教育において構想する必要性を主張する。