著者
牧田 俊樹
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.14-27, 2022-08-31 (Released:2022-10-13)
参考文献数
19

「障害とは何か」という問いがある.しかし,その問いに一義的に答えることはできない.これを前提とし,本稿は,障害者の苦悩・苦痛の軽減・除去等の目的に役立つという意味での「有用性」の観点から,障害定義が,個別の事例で,目的に合わせ,例えそれが矛盾したとしても,複数選択するという,「障害定義の戦略的・実践的使用」が可能なのではないかと考える.そこで,本稿の目的は,この「障害定義の戦略的・実践的使用」の可能性を,予想されるさまざまな批判に応答しながら,議論の俎上に載せることである.結果,「障害定義の戦略的・実践的使用」を,議論の俎上に載せるということを文字通り解釈するならば,本稿の目的は達成されたと考える.そのうえで,「障害定義の戦略的・実践的使用」は,障害に関する事例ごとに目的が異なる以上,その達成のためには,大きな利点を有することを示唆することができた.