著者
井上 興一 横田 弘司 牧田 勝〓
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.779-785, 1995 (Released:2008-05-15)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

外生アスコルビン酸ナトリウムの導入によるL-アスコルビン酸 (AsA) 含量の豊富な葉菜類生産を目的とし, 実用化への基礎資料を得るために本研究を行った. 水耕法で栽培されたサラダナを収穫直前に採取し,高濃度のL-アスコルビン酸ナトリウム (NaAs) 溶液の入ったフラスコで浸漬処理をすることにより, サラダナ葉部のAsA含量を増加させることが可能であるかを検討した. 得られた結果は, 以下のとおりである.1. 処理液のNaAs濃度が上昇するに伴い, 根の吸水力が低下し, NaAs-2000ppm区のサラダナに明らかな萎凋が認められた.2. 高濃度のNaAs浸漬処理によって, 葉部ではNaAs-1000ppm区において対照区の約3.5倍の,NaAs-2000ppm区においては約4.7倍のAsA含量がそれぞれ認められた.3. 5°Cで3日間貯蔵後の両NaAs処理区のサラダナの外観的様相は, 対照区と同様であった. また, この両処理区のAsA含量は収穫当日の場合に比べ, 大きな低下は認められなかった.4. NaAs-1000ppm, NaAs-2000ppm両処理区とも葉部のK, Ca, Mg含量は, 対照区と同様であった.このことから, 24時間の高濃度のNaAs浸漬処理によって, 葉部のミネラル成分が低下することはないと判断された.以上のことから, この処理法によってAsAを豊富に含むサラダナの生産の可能性が示されたが, 実用化にあたっては, さらにAsAの効率的導入法を検討する必要があると考えられた.