著者
巣出 隆之 狩谷 幹夫 諏訪 和男 市川 英一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.1, pp.56-59, 1987-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

N-シリルアミンはN-シアノアミノ化合物に特異的に付加する。反応は比較的低温で円滑に進行することから,他の活性な官能基を有するN-シアノアミノ化合物を対応するグアニジン化合物に誘導するのに有用である。しかしながら,酸性の弱いN-シアノアミノ化合物や塩基性の弱いN-シリルアミンでは反応しにくい。本研究では,この反応におよぼす溶媒の影響およびアミン塩の効果を検討した結果,溶媒としては酸素や窒素原子を含まないものが好適であることを認めた。たとえばN-ブチル-N'-シアノ-S-メチルイソチオ尿素[2a]とN-(トリメチルシリル)ジエチルアミン[1a]との反応では,ジクロロメタン中で対応するグアニジン体[3a]が73%収得されたのに対し,同じ条件下でもジオキサンやアセトン,アセトニトリル中では42~49%にすぎなかった。またアミン塩,とくにピリジン硝酸塩がこの反応をいちじるしく促進することを見いだした。すなわち,ピリジン硝酸塩が存在しない場合,まったくあるいはほとんど反応しなかった[2a]とN-(トリメチルシリル)イソプロピルアミン[1b]あるいは[2b]とN-(トリメチルシリル)アニリン[1c],N,N-ジメチル-N'-シアノ-S-メチルイソチオ尿素[2c]と[1b],シアノイミノジチオ炭酸ジメチル[4]と[1a]との反応も等モルのピリジン硝酸塩の存在下に進行して,それぞれ対応するグアニジン体を生成した。
著者
巣山 隆之 奥野 敏 狩谷 幹夫 市川 英一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.1, pp.51-55, 1987-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
2

N-シリルアミンが穏和な条件下でN-セアノアミノ化合物に特異的に付加して,対応するグアニジン誘導体を生成することを見いだした。N-(トリメチルシリル)ジエチルアミン[3b]は(エトキシカルボニル)シアナミド(ECC)やN-シアノ尿素[8],シアナミド[10a]と発熱してすみやかに反応した。[3b]はまた,N-フェニル-N'シアノ-S-メチルイソチオ尿素[4a],およびN-ブチル-N'シアノ-S-メチルイソチオ尿素[4b],,N-シアノグアニジン[6a]とも室温で反応した。N-(トリメチルシリル)イソプロピルアミン[3a]は[4a]と60℃ で定量的に反応したが,[4b]との反応では同じ条件下で,グアニジン体の収率はわずかに9%であった。N-(トリメチルシリル)アニリン[3c]は反応性が悪く,[4a]とは反応しなかった。また,[(メチルチオ)カルボニル]シアナミド(MCC)あるいはECCとの反応では対応するグアニジン体のMCCあるいはECCの塩が単離された。以上の結果,N-シアノアミノ化合物としては酸性の強いものほど,またN-シリルアミンとしては塩'基性の強いものほど反応しやすいことがわかった。なお,Nに水素原子をもたないN-シアノアミノ化合物はN-シリルアミンとまったく反応しなかった。