著者
猿渡 亜由未 (2008-2009) 猿渡 亜由来 (2007)
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

平成20年度までの研究により,水塊ジェットや実験室スケールの砕波ジェットが着水したときに放出される二次ジェットが水面下の三次元渦構造との相互作用を経由してフィンガー形状及び飛沫へと分裂するメカニズムについて明らかにしたと共に,砕波ジェットのボイド率(体積率)分布を,ジェットの着水条件から予測する為のモデルを構築した.このジェットのボイド率はジェット-壁体衝突時の圧力応答を決定する重要なファクターとなる.フィンガーのサイズや飛沫の生成量等を決定する砕波ジェットの着水条件は,沿岸域における波浪条件により規定され,生成した飛沫の陸域への飛散量や沿岸域における波浪条件は海上の気象条件に依存する.そこで本年度我々は,メソスケール数値気象モデルによる沿岸域気象場の再現を行うと共に,その時の砕波飛沫の生成,輸送,拡散過程の数値計算法の開発を行った.数値気象モデルとして用いたのは近年よく用いられているWeather Research and Forecasting(WRF)を用いた.本モデルにより大量の砕波飛沫が生成された2009年台風18号通過時の気象場の追算を行い,計算結果の沿岸域海上気象場(気圧,風速,風向等)を観測結果と比較し,その再現性を確認した.今後,気象モデルを波浪推算モデルとリンクさせれば,荒天時の波浪場の再現を行う事もできる.また,飛沫の飛散過程は,飛沫濃度の移流拡散方程式を解く事により求めた.沿岸域の飛沫濃度分布を現地観測した既往研究の結果と数値計算結果とを比較し,濃度分布の再現性を確認した.