著者
船越 仁 羽場 かおり 小原 加奈江 谷口 博美 玉懸 敬悦 藤田 勇三郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.9, pp.1516-1522, 1989-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

光照射によって生じたジメチン型メロシアニン(MD)の光異性体が,安定体にもどる速度過程を4種の誘導体について測定し,熱異性化速度定数(ka),活性化エネルギー(Ea)に対する複素環効果とプロトンの触媒作用の機構について調べた。kdは複素環の種類,とくに硫黄の導入数によって5ケタもの差となって現われた。溶媒の種類およびpHの変化によって島はいちじるしく変わるが,Eaはほとんど変わらないこと,Arrheniusの頻度因子はほとんど複素環効果を示さないことなどから,異性化の中間体としてプロトン化メロシアニンが重要な役割を果たしており,かつ,活性化エネルギーはプロトン移動過程の障壁ではなくプロトン付加体の内部回転の障壁を反映しているという結論を得た。メロシアニンの熱異性化速度はプロトン性非水溶媒における潜在的プロトン活動度の定量化に役立つと提案し,純メタノールの塩酸等価水素イオン濃度として2×10-6mol・dm-3を得た。