著者
冨田 博之 山下 英行 中安 慎二 玉木 紀彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.7, pp.488-492, 1997-07-20

前頭蓋底に進展した嗅神経芽細胞腫の1例を報告した.症例は52歳の男性で,頭部MRIで右筋骨洞から右前頭蓋底に進展した6×4.5×4cmの腫瘤を認め,脳腫瘍部分摘出術を施行し嗅神経芽細胞腫と診断された.術後2カ目で残存腫瘍は急速に増大し,開頭脳腫瘍亜全摘術を施行後に60 Gyの放射線療法を行った.頭部,原発巣での腫瘍の再発は認めずに経過したが,2年後に左リンパ節転移を認め,化学療法および放射線療法を施行した.化学療法後のMRIで明らかな病巣の縮小が認められた.本症例のように頭蓋内進展した例に対しては,積極的な摘出術と放射線療法や化学療法との併用が推奨される.