著者
玉田 哲男
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.266-274, 1970-09-30

1952年ごろ, 北海道の道南地方に確認されたダイズ矯化病は, 最近北海道各地に発生し, その被害はきわめて大きい。ダイズにおける病徴は大別して矯化型と縮葉型とに分けられる。病原ウイルスは汁液伝染, 種子伝染できず, ジャガイモヒゲナガアブラムシ(Aulacorthum solani (Kaltenbach))によってうつされる。アブラムシを用いて, 10科43種の植物に接種した結果, レンゲ, ソラマメ, ツルマメ, エンドウ, ナンキンマメ, コモンベッチ, シロクローバ, ラジノクローバ, アカクローバ, アルサイククローバ,クリムソンクローバ, サブタレニアンクローバおよびサックリングクローバなどのマメ科植物に感染することがわかった。とくにアカクローバとシロクローバ(ラジノクローバ)は, 自然で無病徴感染しており, 本ウイルスの感染源として,重要な役割を果たしている。供試した45種のダイズ品種は, すべて感染したが, 病徴に差異がみられた。ジャガイモヒゲナガアブラムシは, 罹病植物を60分間吸汁することにより, ウイルスを獲得することができ,罹病植物上で飼育した保毒虫は, 健全植物を30分間吸汁することにより感染することができた。いずれの吸汗時間も長いほど, 伝染率が増大した。ウイルスの最短虫体内潜伏期間は15時間と27時間の間にあった。アブラムシは脱皮後も伝染力を保持し, 最長21日間ウィルスを保有していた虫もあったが, 大部分は感染源を離れるにつれて, 伝染力を失う傾向があった。ダイズ倭化ウイルスの伝染様式は, ジャガイモ葉巻ウイルスやpea enation mosaic virusのような循環型ウイルスときわめてよく類似していた。しかし, 本ウィルスは寄生範囲, 病徴, および媒介虫の種類から, 今まで報告されたどのウイルスとも異なっていた。