著者
玉置 重俊
出版者
北海道情報大学
雑誌
北海道情報大学紀要 (ISSN:09156658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-15, 2002-09

葛洪が著した『抱朴子』内篇は、不老長生の仙術を如何にして獲得するのかという方法を教えるものだが、実際の獲得方法には、興味あることに、技術的な体得と倫理・道徳の実践という両面が必要とされている。故に、この小論では『抱朴子』内篇に現れる倫理思想の実態とその特色を明らかにし、倫理思想の必要性についても言及する。構成は、以下のようにする。第一節では、葛洪の略歴と性格を探る。第二節では、『抱朴子』内篇に見える倫理思想を詳細に検討するが、主に道経に現れる説話を専ら研究する。第三節では、伝統的な道教の戒律の諸説を分析し、その時代における存在価値と意義を明確にする。第四節では、葛洪独自の倫理思想の特徴を考察し、彼の思想家としての立場を再検討する。結びでは、『抱朴子』内篇で倫理思想が必要とされた理由とその目的を説明して、この著作の果たした時代的役割と葛洪が神仙道教に尽くした貢献を総括する。