著者
玉里 久美
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.58-67, 2013-11-30 (Released:2017-07-01)

本研究の目的は,社会復帰途上にある慢性統合失調症患者にとって,看護師が傾聴することの意義とその様相を明らかにすることである.慢性統合失調症患者10名を対象に,看護師による傾聴について半構成的面接を行い,KJ法の原則手順に従って質的記述的に分析した.その様相は,4つの段階的な構造を示し,【聴いてもらいたい欲求に歯止めをかける要因】,【聴いてもらえると思う看護師の見極め】,【聴いてもらおうとする行動を促進させる要因】,【真意を語れることを左右する聴かれ方】の4つが導かれた.この4つ目の段階においては,《心がほぐれるような聴かれ方》と《接線的ズレのある聴かれ方》に分類された.患者がとらえた傾聴の意義は,4つ目の段階の《心がほぐれるような聴かれ方》から発展し,【精神症状の中に混在する心のメッセージを汲み取ってもらえた安堵感】,【将来の生き方を模索する苦悩の共有感】,【聴いてもらえた過程で芽生えてきた看護師への信頼感】の3つが抽出された.結果から,看護師の傾聴の仕方によって意思表示を可能にし,患者の自己成長のきっかけに繋がることが示唆された.