著者
玉野 雅裕 加藤 士郎 岡村 麻子 星野 朝文 高橋 晶
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.275-280, 2018 (Released:2019-02-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

高齢の慢性心不全患者は増加しており,感染の合併などで高率に急性増悪を来し,フロセミド静脈注射,トルバプタン内服治療が行われている。しかし,一定の頻度で難治性患者(フロセミドやトルバプタンに対するノンレスポンダー)が存在し,臨床上問題になっている。今回我々は,難治性の心不全に五苓散が著効した2症例を経験した。五苓散投与により2症例とも尿量が増加し,症状,理学所見,各種の検査所見は著明に改善した。さらに退院後,これらの薬剤は継続投与され,心不全の増悪による再入院は約1年間にわたって回避された。この結果は,五苓散の臓器,組織の水の偏在を正常化する作用,および腎集合管におけるトルバプタンの作用を再活性化させた可能性が考えられ,今後,慢性のうっ血性心不全に対する五苓散併用の有用性が示唆された。