著者
岡本 智伸 中村 未樹 椛田 聖孝 王 〓生
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.217-222, 2000-12-25
被引用文献数
4

Stipa baicalensis優占植生における潜在的な生産性および生態学的な特徴を明らかにするため, 放牧および採草利用されていない極相植生のS. baicalensis Prunus sibirica群落をとりあげ, 地上部現存量の季節的動態や植生構成などを中国東北部の松嫩平原において調査した。群落は64種の植物から構成された。群落地上部の現存量は生長開始後130日目(8月18日)に最大の222.89DMm^<-2>に達し, その後減少した。現存量の動態は拡張ロジスティックモデルにより近似することが可能であった。推定した群落生長速度は生長開始後66日目(6月15日)に最大(3.90gDMm^<-2>day^<-1>)に達した。その後群落生長速度は減少し, 生長開始後125日目(8月13日)で負の値を示した。S. baicalensisは群落現存量の26〜36%を占め, 最も生産性の高い種だった。P. sibiricaは13〜18%を占めた。残りの生産はCleistogenes, その他のイネ科植物およびCarexが主として支えた。生長速度が最大値に達するのが最も早かったのはCarexであった。