著者
王 元武 赤堀 幸男
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.241-262, 1991-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
51

本邦における薬酒の由来は中国よりの渡来に源を発するものであり,中世以降には単味・多味いずれの場合にも日本独自のものに変えた薬酒の出現が認められる。この日本薬酒の発展過程では, 比較的高水準の中医学理論に基づく正統的流れから種々の変方が派生し, 時代と共に変化してきた事実が方義解析を用いて立証できる。特に近代に至ると, 漢方医学真髄の伝承には極めて困難な情況となり, 理論的根拠の脆弱化を招き方組成の乱れが増して来た。ここには, 日本薬酒の効能が「滋養強壮」に限定され, しかもその定義が明確でなかった経緯がある。この問題点を解決するために,「滋養強壮」の定義を中医学理論に基づく厳密な考察により確定し,「滋養強壮剤」としての薬酒の意義と基本構成を論じ, 薬酒方剤の組方原則と薬物配合量を考察した。この基本路線の上に, 今後の日本薬酒の在るべき姿を展望し, 薬酒方剤の正しい発展と適正な利用を提言した。
著者
王 元武 赤堀 幸男
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.49-64, 1988-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
29

中国の薬酒は疾病の治療・予防のために創製された方剤であり, 中医弁証に基づく組方原則により組成され, 多くの種類の疾病に対応できる方剤体糸を構成する。このような中国薬酒の本質を解明するために, 歴代典籍の記述を参照して, 酒と薬酒の歴史を考証し, 酒の種類・薬性・宜忌についての記述を引用して酒の本性と特徴を詳しく論述した。これら基礎資料をもとにして, 中医学基礎理論の組方原則に基づく薬酒方剤の組成解析を実施し, 薬酒中における酒の地位は君・使両薬としての二重性を持つことを明らかにした。君薬とは定義通りの主薬であり, 使薬とは引薬・行薬勢・薬性制約・薬効改変の四種の作用を包含する。この方中地位の二重性は, 極めて特殊な事例であり, 薬酒方剤の特質を構成する最も本質的な因子である。さらに, 薬酒方剤の分類を提示し, 著名な薬酒についての解説を行い, 薬酒使用上の注意点を指摘して安全有効な使用法を提言した。