著者
王 国譜 王 文超 佐久間 春夫
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.67-73, 2007
被引用文献数
1

本研究では,健康づくりに太極拳を取り入れている健常者を対象に,太極拳式呼吸法の遂行に件う精神生理学的応答について検討を行った.被験者(年齢57±4.4歳,継続年数5.6±2.3年)は,太極拳を継続している者であった.安静時,太極拳式呼吸時,終了後30分時の各時間条件での状態不安,心拍,血圧,脳波を測定した. 安静時条件に比べ以下の結果が得られた,(1)太極拳式呼吸を実施した直後及び終了後30分に状態不安の有意な低下,(2)太極拳式呼吸時及び終了後30分時の心拍数の有意な低下,心拍変動のCVRRとHF/LF≧1の出現頻度にも有意な増加,(3)血圧の低下傾向,(4)条仲間には脳波の含有率の有意な差が見られなかったが,脳波帯域別に有意な差が認められ,α1帯域がβ2帯域より,α2帯域がθ帯域及びβ2帯域より有意に多かった. 以上のことから,太極拳式呼吸の実施により,状態不安が低下し自律神経系の側面からも心理的ストレスが減少することが示された.また,太極拳の継読者は,太極拳の習得および修得により太極拳式呼吸が日常生活においても習慣化されていることによって,α1帯域及びα2帯域の出現率が優位であったと考えられる.従って,これらの結果は,身体運動を伴わない太極拳式呼吸のみ実施しても,心身の健康を向上させる効果のあることが示唆されたものと考えられ,太極拳式呼吸法の活用の有益さを示すものと期待される.