著者
生嶋 佳子 坂下 竜也 山本 剛 久保田 啓一
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.141, 2009

【はじめに】<BR> 不慮の事故により心身に重度な障害を持った児に急性期から在宅復帰まで関わる機会を得た。在宅に帰すにあたり、両親の不安要素となる状態悪化時の対応が重要な課題であった。そのため両親への指導、訪問サービス等の社会資源の準備を行うとともに、症例の移動手段として人工呼吸器・酸素ボンベ搭載型のバギーを作製した。これらの取り組みを通じ、在宅生活での両親の不安解消の一助となり得たため報告する。<BR>【症例】<BR> 0歳2ヶ月、男児、低酸素脳症。自宅にて心肺停止状態となり当院救急搬入。諸検査より臨床的脳死状態と診断。リハビリテーション開始時よりJCS300、人工呼吸器管理、弛緩性四肢麻痺を認めた。経過中、肺炎、感染症等を併発し全身状態の悪化が度々みられた。両親の自宅退院への強い希望があり、主治医の判断のもと入院14ヶ月目に自宅退院への方向性が決定される。<BR>【退院前準備】<BR> 両親への指導として吸引、気切カニュラ交換等を医師や看護師が行い、理学療法士、作業療法士により姿勢管理や排痰の指導を行った。また身体障害者手帳を申請し訪問看護等の準備をすすめた。退院後の状態悪化時には速やかな病院搬送が必要であり、その移動手段として人工呼吸器・酸素ボンベ搭載型バギーを考案。退院前訪問にて居室間取り・段差の確認を行い、介護タクシーの車内寸法を測定し、配置場所やサイズ調整等を行った。両親の要望をふまえ、各々のスタッフの意見を取り入れながら仮合せを数回行い納品に至った。その後、外出や外泊訓練を行い、入院22ヶ月目に自宅退院となった。<BR>【在宅での生活】<BR> 退院後は訪問看護・リハビリや医師による訪問診療を実施し、定期的に症例の状態を確認している。バギーは居室内に入れ、常時架台に人工呼吸器や酸素ボンベを搭載したまま寝台の横に設置し、機器類を使用している。一度急変にて当院へ搬入されたが、予め機器類を搭載していたことで余分な取り付け作業等が省け、迅速な対応にて搬送が可能であった。<BR>【まとめ】<BR> 症例は入院中に肺炎、感染症を併発し何度も生命的危機に直面した。そのため在宅へ帰すにあたり最も危惧されたことは全身状態悪化時の対応であり、両親の最も大きな不安要素でもあった。そのため移動手段として人工呼吸器・酸素ボンベ搭載型バギーを作製し、常時機器類を搭載し使用する環境設定を行なった。実際に退院後に急変にみまわれたが、それらの事前準備にて両親共に落ち着いた対応できていた。そのことが現在では在宅生活での自信にも繋がっている。また、症例の体調や気候が良い時には近所の公園にバギーで外出するなど家族で余暇活動を行う余裕も出来てきている。「一緒にいることで充実した日々を過ごしている」と退院後に母親は語っており、当初抱えていた不安の解消と充実した生活への支援へとなり得たものと考える。