著者
石井 怜子 田中 和佳子
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.33, pp.73-82, 2007-06

本研究は、読解力育成を掲げる中級日本語教科書(3種4冊)を対象に、取り上げている学習項目・教え方と練習・系統性と多読拡大練習の実際を調査・分析した。分析の焦点は、文章構造知識によるトップダウンと情報間の意味的関連付けによるボトムアップ両面からのcoherenceの把握能力育成に絞り、分析の枠組みとして、Graesser, McNamara & Louwerse(2003)の提案を援用して、重要情報の選択、意味接続関係、文章構造にかかわる学習について調査した。分析の結果、これらの教科書は総じて、従来の質問応答による内容確認にとどまることなく、多様なタスクを通じてこれらの知識を教授し、知識の使用の練習をさせていることが明らかとなった一方、学習項目の厳選と配列、知識の提示と練習のあり方、知識を自ら活用できる読み手となるための学習過程に、今後検討するべき課題があることが示された。