著者
田中 文夫
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.33-39, 1996
参考文献数
24
被引用文献数
1

ジャガイモそうか病は北海道内全域で発生が見られるが,特に網走・釧路・根室地方の澱粉原料栽培地域での被害が顕著である。道内に分布する病原菌はStreptomyces scabies, S. scabies subsp. achromogenesと新種のS. turgidiscabiesならびに未同定のStreptomyces sp.の4種類と同定された。これら4種の病原菌の地理的分布には明かな偏りがあり,前2者は道央,道南地方に,後2者は道東地方に局在する。病原菌の識別の方法として,特異抗体の利用によるELISA法,種特異的プライマーの利用によるPCR法の利用の可能性が示された。さらに,種特異性を有する寄生性アクチノファージの利用も検討中である。今後,これらの応用による,土壌中の病原菌の定量法の開発が望まれる。土壌環境制御による本病の防除の試みの一例として,土壌水分環境の制御および土壌酸度調整の効果を検討した。土壌水分に関しては,レインガン,リールマシンなどの圃場潅水装置による防除効果が今後,期待される。土壌酸度調整による防除では,フェロサンド(硫酸第1鉄),硫酸アルミニウム,各種高蛋白質資材の効果は高いが,今後は局所施用(作条施用)による,低コストで効率的な防除方法の開発が必要である。これらの資材の第一次的な作用機作は土壌pHの降下によるものと考えられるが,その作用性ならびに実用性についてはさらに検討を要する課題である。難防除土壌病害とされる本病の防除法として,抵抗性品種の利用は不可欠である。しかし,将来的な優占菌種の変動などを考慮すると,抵抗性品種の利用と土壌環境制御および生物的防除などを組み合わせた総合的な防除体系を確立する必要がある。