著者
髙山 浩一 田中 理美
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.180-187, 2022-06-20 (Released:2022-06-29)
参考文献数
30

がん悪液質は体重減少,食欲不振,倦怠感を主たる徴候とし,がん患者の生命予後やQOLを悪化させる.悪液質の発症には生体反応として産生される炎症性サイトカインや腫瘍細胞が産生するさまざまな因子が関与しており,エネルギー代謝の異常と骨格筋の分解をもたらす.Fearonらは体重減少の程度による簡便な診断基準を提唱し,より早期からの介入をすすめているが,がん悪液質の認知度はまだ低く今後も啓発活動が必要である.2021年,本邦ではがん悪液質を適応とするグレリン様作動薬,アナモレリンが世界に先駆けて承認され,現在日常臨床で用いられている.しかし,薬物治療だけでは不十分であり,栄養療法や運動療法を組み合わせた多職種による包括的治療が必要と考えられる.また,GDF-15抗体などの新たな薬剤開発も進行しており,がん悪液質治療のさらなる進歩が期待される.