著者
田中,敏
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, 1981-12-30

本研究の目的は,児童の発話において文節末尾に高頻度に出現するところの2つの停滞現象-「添音」と「強調」-の機能的分析にあった。次の仮説が検証された。仮説(1):添音は困難な発話を援助する機能をもつ。仮説(2):強調は添音の代替現象のひとつである。実験1では,小学1年生と小学4年生が対象とされ,仮説(1)を検証するため発話課題の困難度が変化させられ,また仮説(2)を検証するため場面操作によって添音の発生頻度が変化させられた。その結果,(a)発話課題の効果は得られず,仮説(1)は支持されなかったが,(b)添音の発生が抑制された公式場面では強調が増加し,逆に,添音の発生が促進された親密場面では強調は減少して,しかも添音と強調を合わせた発生率は,この種の発話停滞現象への等価な効果が保証されている両場面間で有意差を示さなかった。したがって,添音と強調の相補的分布が証明され,仮説(2)が支持された。