- 著者
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田原 光宏
横田 竜一
郡山 博樹
熊田 賢次
泉 徹
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2003, pp.E0947-E0947, 2004
【はじめに】昨今、通じて医療事故の報道が取り上げられている中、医師や看護師のみならず我々理学療法士も、治療中のトラブルや転倒事故等の治療過誤による訴訟、賠償問題を起こしかねない。その中でも転倒に関する内容は多く報告されているが、その転倒につながる前の状況報告は少ない。今回、我々はリハビリ治療における転倒を誘発しやすいつまずきや、ふらつきの特徴、傾向について調査したので報告する。<BR>【対象・方法】当科入院患者(痴呆、高次脳機能障害者は除く)平成13年7月1日から平成15年6月30日の2年間の事故報告書(ヒヤリハット)をもとに、その患者の治療時間帯、開始時期、治療内容、前夜の状況を調査した。<BR>【結果】総件数168件。治療時間帯として午前10時から11時(32.1%)、午前9時から10時(20.8%)、午後2時から3時(15.5%)の順に多かった。又、リハビリ開始時期として2週間以上1ヵ月未満(39.3%)、1ヵ月以上2ヵ月未満(22.0%)、2週間未満(12.5%)の順であった。次に治療内容の中で特に目立つものとしてまず、坐位練習では、アライメント修正中が最も多く、立位練習は起立初動時や保持中、ボールによるバランス練習では、患者の投球後やボールのキャッチミスなど、又、床からの立ち上がり練習では立位完成時、高這いから手が離れる時が多かった。歩行練習においては、方向転換時、歩行開始時、椅子への到着時が目立ち、階段練習では降りの初動作、昇り時の踊り場到着時など、各治療の危険性が認められた。又、患者の前夜の状況では、同室の患者の騒音や急変にての睡眠不足、発熱37度以上、20から30の血圧の増減、眠剤や降圧剤等の薬物投与、遅延が認められた。その他、担当者休暇による代行治療時、歩行練習中の患者同士の挨拶、治療時間や負荷の増加時が挙げられた。<BR>【考察】今回の調査の結果、治療時間帯においては、通常の予約患者治療中に加え、同時に病院業務の開始より外来の新患処方箋が依頼される時間と重なるなど、リハビリ室内に患者が集中しやすい繁忙時間帯であるとうかがわれた。次に、リハビリ開始時期では、各患者個人差はあるものの回復の変化が認められ、治療内容のレベルアップや、変更の時期であると推測されるなど、応用動作や、生活環境に沿った実践的なアプローチへの移行の期間と考えられた。又、各治療内容においても様々な治療の特徴が挙げられるが、共通して新しい治療への導入時期であったり、ダイナミックな要素が含まれている治療が比較的多く、かつ現動作から次の動作への変換時に出現しやすいとうかがわれた。<BR> 以上、転倒につながる要因として患者サイドの問題だけではなく、在院日数の短縮化による期間内での治療効果の急速化、患者担当数、単位時間数、治療者の経験年数等、医療機関の問題などを含め、治療者サイドにも何らかの原因が関与していることも無視できない。よって今後、それらの関連性の評価、調査が必要と思われた。