- 著者
-
田原 太郎
- 出版者
- NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
- 雑誌
- 自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.1, pp.69-77, 2021-09-30 (Released:2022-09-30)
- 参考文献数
- 12
本研究の目的は、即時性エコラリアを示す自閉スペクトラム症の幼児へのイントラバーバル訓練におけるモデル提示の効果を検討することである。訓練は、音声プロンプトによる訓練期間、モデル提示を追加した期間、9カ月後のフォローアップ(維持テストと追加訓練)の期間から構成されていた。場面は家庭および通所施設の療育場面で行われた。対象児は即時性エコラリアを示す自閉スペクトラム症の女児だった。訓練開始時は2歳3カ月だった。独立変数の操作として、音声プロンプトを用いた訓練を続け、それにモデル提示を加えた指導を2セッション実施した。ターゲット行動は、名前、年齢、住所の3 つの質問に対するエコラリアのない適切な応答行動とした。結果、当初は音声プロンプトによる介入で訓練の効果がみられなかった。しかしモデル提示を導入後、正反応率が上昇した。その後モデル提示や音声プロンプトを除去した後も正反応がみられた。また質問の文章や人物を変えても答えられるなど一定の般化がみられた。一方で、9カ月後のフォローアップでは名前以外の反応は維持されていなかった。結論としてはまず介入方法の変更の効果がみられた。しかしモデリング時の道具などの剰余変数があり、独立変数をモデリングに限定することはできなかった。また介入効果の維持やターゲット行動の選定などの課題も残された。最後に臨床的意義として本事例の介入法は類似の事例に応用する際、コストが低く、実施が容易である利点が考えられた。