著者
薗田 将樹 山本 昇伯 髙田 敦子 菊地 学 田宮 大介 遠藤 良二 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.155-160, 2018

<p>東洋医学的治療が有効であったうつ病の3症例を報告する。3症例とも同一職場(全17名)の職員。症例1は46 歳男性,勤続20年。主訴は抑うつ,不眠。症例2は28歳女性。勤続9年。主訴は嘔気,気分不良。症例3は41歳男性,勤続15年。主訴は焦燥感,不眠,抑うつ。3症例に対して抑肝散および抑肝散加陳皮半夏で加療し,症状の改善がみられた。今回,処方選択において3症例が同一の職場環境であることを考慮した。抑肝散には母子同服という服用法が伝えられている。また,精神神経分野にて情動伝染(Emotional Contagion)という情動の共有システムがHoffman(1984)により提唱されている。総合的に考えると母子同服は情動伝染を考慮した経験的治療法であり、同一職場のような同じコミュニティ内でも応用可能と考察した。本症例のように,同一職場内の情動伝染を考慮した職場内同服は有用である可能性がある。</p>