- 著者
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畠 亮
矢内原 仁
早川 邦弘
大橋 正和
石川 博通
中川 健
田崎 寛
- 出版者
- 社団法人日本泌尿器科学会
- 雑誌
- 日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
- 巻号頁・発行日
- vol.85, no.6, pp.974-980, 1994-06-20
- 被引用文献数
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5
2
われわれの施設における副腎摘出術施行症例は1971年から1992年6月までに151例を数える.そのうち99例は1985年以後の8年間の症例で明らかに増加している.症例数増加の理由は偶発腫瘍の増加である.ちなみに99例中26例が偶発腫瘍であった.26例中24例は内分泌非活性腫瘍であり,活性腫瘍である残りの2例はいずれも褐色細胞腫であった.われわれが暫定的に決めた偶発腫瘍の手術適応基準は,(1)腫瘍径3.5cm以上,(2)画像診断上悪性が否定できないもの,(3)腫瘍径が3.5cm以下でも6ヵ月ごとの再検査で増大傾向が明らかなもの,(4)内分泌活性腫瘍は全て,とした.本研究の主目的は偶発腫瘍における悪性腫瘍との鑑別診断である.診断方法としては,(1)エコー, CT, MRI,血管造影などによる画像診断,(2)摘出した副腎腫瘍組織のフローサイトメトリーによるDNA ploidy, BrdU取り込み率の検討,(3)尿中ステロイド分画の検討を行った.一般論として現在の診断技術をもってしても確実に悪性腫瘍を鑑別できる方法はなく,われわれの選択した方法に対する評価も,文献によって賛否両論ある.そうした中,われわれの結果で興味をひいたことは,尿中17KS分画の検討である.すなわち癌症例において高値を示したのは,ステロイド核5番目のOH基がβ位にある画分に限られていた.まだ症例数が少なく,断定的なことはいえないが,鑑別診断の有力な方法になりうるものと期待される.