著者
吉井 ひろ子 田嶋 長子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.30-40, 2016-11-30 (Released:2017-11-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本研究の目的は,境界性パーソナリティ障害患者の看護における精神科熟練看護師の実践内容を明らかにすることである.7施設の精神科熟練看護師10名(平均看護師経験16年・平均精神科看護経験13年)に半構造的面接を行い,KJ法での分析の結果,115個のコードの抽出から25個のサブカテゴリと6つのカテゴリに生成された.BPD看護における熟練看護師は,BPD患者病理を理解した上で,【生きづらさや本音を引き出しながら患者を理解する】といった患者受容をし,【大切に思う気持ちを伝えることで安心と励ましを届ける】ことや,【“まきこまれない”を意識しすぎず思いに共感することで信頼関係を形成】していた.また,患者に即した成長を促す目的で,【患者のありのままを受容し,セルフコントロールを支える】ことや,【患者の状況に応じて枠組みを調整したりしなかったりしながら,セルフコントロールを手伝う】こと,心理的中立の立場を遵守するために,【看護師のありのままの自分を受容し,プロ意識でセルフコントロールする】ことも含め,全般にわたってフレキシブルな対処がみてとれた.これらから,BPD看護は難しくても,患者や看護師自身のありのままを受容し,看護師の思考と行動のフレームを柔軟に変容させたりさせなかったりするフレキシブルな対処によって,心的疲弊に陥らずよいかかわりを続けることが可能になると考えられた.