著者
田村 文造
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.193-205, 1967-03-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

従来終点が不明りょうなため水溶液中の滴定が困難であった物質を精度よく定量するために,吸光度比法を開発した.酸塩基滴定の場合,酸性色とアルカリ性色のスペクトルが著しく異なる,適当なpH指示薬を選び,それぞれの吸収極大の吸光度をAλ1,Aλ2とすると,吸光度比r=Aλ2/(Aλ1+Aλ2)は当量点付近のpHのわずかな変化に対応して大きく変化する.あらかじめ,中和度の逆数xとrとの検量線を作成しておけば,容易に正確な当量点を決定することができる.この方法によれば,一般に,ビュレットは不必要となり,全量ピペットで一度に標準液を加えることができ,精度も向上する.有機酸アルカリ塩の定量に適用した場合,従来法に比べ変動係数は0.2%から0.07%に減り,定量所要時間も1/6となった.この吸光度比法を公定書の原薬,試薬の定量に適した方法として提出する.