著者
壁島 康郎 高橋 洋子 亀山 哲章 戸泉 篤 田村 洋一郎 影山 隆久
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.592-597, 2005-06-01
被引用文献数
5

目的: 大腸癌手術症例に対する術後早期における大建中湯投与の有用性を検討した.対象と方法: 2000年1月から2003年12月に当院において大腸癌手術が施行された98例(平均年齢67.9±11.8歳 男性:女性=47:51)のうち, 第1〜2病日に大建中湯(7.5g/日)の投与群と非投与群に分け, 排ガス日, 術後在院期間, 術後早期の腸閉塞発症率を検討した.対象から縫合不全, 感染症症例は除外した.解析は開腹手術(投与群24例, 非投与群51例), 腹腔鏡下手術(投与群16例, 非投与群7例)に分けて行った.結果: 開腹術症例における背景因子に, 2群間に有意差は認めなかった.排ガス日(POD)は投与群: 2.4±0.7, 非投与群: 3.4±1.6(P=0.007), 術後入院日数(POD)は投与群: 8.4±1.6, 非投与群: 12.3±7.1 (P=0.009)であった.在院期間中における腸閉塞発症率は, 投与群0% (0/24), 非投与群5.8% (3/51)であった.術後入院日数の一元配置分散分析においては, 術中出血量に次いで大建中湯投与の有無が有意な因子であった.一方, 腹腔鏡下手術症例においては, 2群間に入院期間・腸閉塞発症率における有意差は認められなかった.考察: 開腹大腸癌手術後早期における大建中湯投与は, 入院期間の短縮, 術後腸閉塞の予防に有用である可能性が示された.