著者
田澤 祐太 酒井 久治 大木 伸一郎 井元 俊之
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.201-205, 2015

船外機は,プロペラを含む動力伝達部とディーゼル機関またはガソリン機関の原動機部を組み合わせた可担式の小型舟艇用推進装置である。これを無動力船のトランザムに取り付けるだけで,動力化を可能にするものであり,沿岸漁業における重要な小型漁船用推進装置である。海面漁業における船外機付漁船数は25400隻であり,漁船総数の38%を占めている。また,近年では環境問題への対応策として,同装置の原動機は4ストローク機関が主流になっている。一方,船外機の冷却は海水による直接冷却方式である。独立した熱交換器がなく,シリンダブロック内にある狭隘な冷却通路を海水が通過することにより冷却する方式である。帰港後には冷却水通路の清水洗浄が容易でないため,冷却水通路内に残る海水が蒸発して塩が析出し,またスライムなども蓄積しやすくなる。その結果,冷却水通路が閉塞され,冷却海水の流量不足によるオーバーヒートを起こしやすくなる。これは,船外機の寿命を大幅に縮めて,廃棄される原因になっている。これらの防止対策は,フラッシングキットや水洗キットと呼ばれるものが市販され,冷却水通路に取り付けたプラグから,また船外機の冷却海水取り入れ口から,清水を供給し,清水によるフラッシングを行なうものである。冷却水通路内に塩の析出を防止することに重きをおいたものであるが,閉塞気味の冷却水通路を直接的に復旧するものではない。このため,冷却水通路を簡単に洗浄し,析出物および堆積物を積極的に除去できる装置の開発が望まれる。一方,著者らは,プレート式熱交換器を対象として,同熱交換器を通過する冷却海水に,胡桃の粒子や,ホタテガイの貝殻の粉末(以降,貝殻粉末という)と微小径の空気を混入させて,汚れを除去する洗浄システムを構築し,洗浄効果を報告した。これらのシステムでは,熱交換器の開放清掃やブラシによる清掃を伴わず,海水および清水を冷却伝熱面に沿って通過させるだけで,洗浄を可能にした。以上の背景と現在までの研究成果を踏まえて,本研究は船外機の狭隘な冷却水通路に析出した塩や堆積したスライムを除去するため,清水に貝殻粉末および圧縮空気を混入させて循環させる洗浄装置を試作した。そこで,堆積物を付着させたアクリル管を用いて,貝殻粉末の混合率などの最適条件を洗浄効果である付着物の除去率から求めた模擬実験,実機の洗浄実験を実施したので報告する。