著者
田草川 史彦 田草川 佳実 鈴木 さやか 木村 太郎
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1+2, pp.1-9, 2019 (Released:2020-05-08)
参考文献数
31

ネコの卵巣子宮摘出術に対する腰部傍脊椎ブロックによる呼気終末イソフルラン濃度(ETISO)への影響、および合併症について検討を行った。研究は42頭の健康なネコを対象に行った。ブプレノルフィンおよびアルファキサロンによる前投与後、イソフルランにより麻酔維持を行い、傍脊椎ブロック(PVB)を行った。PVBは0.1%リドカイン(L)、デクスメデトミジン0.6 µg/kg(D)、0.1%リドカイン+デクスメデトミジン0.6 µg/kg傍脊椎投与(LD)、0.1%リドカイン+メデトミジン1.2 µg/kg傍脊椎投与(LM)を用いて実施した。また、投与経路による影響を確認するために、0.1%リドカインによるPVBに加えて、筋肉内投与によるデクスメデトミジン(LDIM)あるいはメデトミジン(LMIM)の併用も行った。腰部傍脊椎ブロックには超音波ガイド法を用いて、左右第2–3腰椎間に行った。挿管後15分におけるベースライン(T0)および術中13の時点においてETISO、心拍数、平均動脈圧を記録し、T0よりも15%以上心拍数または平均動脈圧が上昇した場合ETISOを0.1%増加させ、平均動脈圧が60 mmHg以下となった場合にはETISOを0.1%減少させた。各時点におけるETISOにはKruskal-Wallis検定を、体重および各時点における心拍数、平均動脈圧にはTukeyの多重比較検定を用いて比較を行った。傍脊椎ブロック手技に関連する合併症や術後の運動失調および排尿異常は認められなかった。Lに比べてLDにおいて一貫して低いETISOが得られた。さらにLDによる術中のETISOはDよりも低値であった。L、LM、LMIM間のETISOに有意差は見られなかった。治療を必要とする心拍数、平均動脈圧の変化は見られなかった。超音波ガイド法を用いた低濃度リドカインとデクスメデトミジンによる腰部傍脊椎ブロックはイソフルラン要求量減少作用を有し、ネコの卵巣子宮摘出術に対する鎮痛法の選択肢となる可能性が示された。