著者
田辺 洋二
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田大学日本語研究教育センター紀要 (ISSN:0915440X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-26, 1990-03-25

本稿の目的は, 和製英語の形態を特性によって分類することにある.資料はカタカナ辞典, 辞書, 現代用語辞典などから和製用語と見なされる単語と, 和製英語と表示のある複合語を摘出したもので, さまざまな特性によって分類を試みた.語数は2191語である.分類には, まず 1)単語型と複合語型, 2)同義型と異義型, 3)完全形型と省略形型の3対を基本とした.次いで, 完全形型と省略形型の下位類型特性として音声借用, 文字借用, 帰化, 混種, 略語, 接頭辞や接尾辞, 置き換え, 倒置などの特性を設定した.同義型と異義型は, 意味構造のための特性であるが, 和製英語の形態分類には, 帰化や混種などを含めて, 意味の関与から逃れることが出来ない.また, 英語及び英語らしい語句を日本語として使う特殊性からも意味の確認が必要になるのである.複合語型の中の単独の特性として, かぱん語型と頭字語型を置いた.これらは, 省略形型の中でも, かぱん語は省略形, 頭字語型は中・後省略形に関わるもので, 和製英語をつくり出す強力な能力をもつ特性である.それと比較し省略は非常に少ない。頭字語型では,ちょうど「早稲田大学」が頭を摘みとって「早大」となるように, 漢字合成語と同じ造語法をとる.和製英語には複合語の形態のものが多いが, その多くのものが後省略, 中省略, それに中・後省略である.これは和製英語の複合語の特徴的形態と言って過言ではないだろう。本分類は和製英語が持つ形態的多面性を基準に行ったものなので, 同じ例が2特性以上に関わることがしぱしばある。トラペンなどの不規則型については, ほとんどのものが頭字型に準じるが, 不規則型をひとつの分類特性と考えることは不可能ではない.