著者
田近 洵一
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.2-15, 2012

<p>教育において、文学を教材とすることの意義は、それを通して人間如何に生きるべきかの道徳を身につけさせることにあるのではない。それを読むという行為自体に、言語の教育としての価値があるからだ。その文学を読むという行為の本質は、言語的資材である文章(第一次テキスト)に対する主体の意味作用(signification)によって、読者の内に第二次テキストとしての意味世界を生成し、さらにその意味について考察を深め、主体にとって「未見の他者」を追究していくことにある。すなわち、〈読み〉は、読者にとって意味世界の生成による自己創造の行為なのだ。では、その自己創造としての文学の〈読み〉は、如何にして成立するのだろうか。本稿は、そのような自己創造の〈読み〉原理について考察したものである。</p>