著者
田邊 佳穂 松崎 絹佳
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-05-10

太陽系初期においてどのように惑星が形成されたのかを明らかにすることは重要である。隕石はその手掛かりの一つになっているが、地球に降ってくる隕石の数は非常に少ない。それに対して宇宙塵は隕石よりも地球へ降ってくる粒子数が多く、さらに、地球上のあらゆる場所で採取することができる。そのため、宇宙塵を研究すると惑星の形成のされ方が解明できる可能性が高い。そこで私たちは、宇宙塵に目をつけた。 宇宙塵は、ワセリンなどの粘着剤を塗布したスライドガラスを屋外にさらし、スライドガラスに付着した粒子の中から顕微鏡などの拡大機器を用いて採取する方法が一般的である。この採取方法では、地表由来の物質が混ざりやすく、また、一晩屋外に置いた際に採取できる宇宙塵の数は一枚のスライドガラスに対し0または1個と少ない。そのため、スライドガラスに付着した粒子を顕微鏡で見た際、粒子のほとんどが地表由来の物質となり、宇宙塵を探し出すのに手間と時間がかかる。 そこで本研究では、地表からの物質の混入を削減し、より効率よく採取する宇宙塵採取手法を開発した。まず初めに、地表由来の物質と宇宙塵とが混ざらないよう、図のような装置を作製した(fg.1)。重りを載せたベニヤ板に逆さまにしたプラスチックケースをガムテープで固定し、5 cmごとに高さを変化させたアルミ板をケースの側面に取り付けた。そして、プラスチックケースの底面にワセリンを塗布したスライドガラス10枚を取り付けた。外壁の高さは0 ㎝~30 ㎝の5 ㎝刻みで設定し、計七つの装置を一晩屋外に置いた。この実験では、アルミ板の外壁を取り付けることにより、風により舞い上がった余計な地表由来の物質がスライドガラスに付着するのをどれだけ減少させることができるかを検証した。その結果、外壁の高さを30 ㎝に設定したとき、地表由来の物質の数は0 ㎝のときに対して76%減少し、宇宙塵を見つけ出すことが容易になった。今回の実験では、最も高い外壁を30 cmとした。これは30 cmよりも高い外壁をつけると外壁が風の影響を受けて倒れるなど、装置が扱いにくいからである。外壁の高さを30 cmとした装置が、地表由来の物質の混入が少なく、扱いもちょうどよい高さであるため、この装置を用いて、宇宙塵採取を行うこととした。