著者
杉 朋幸 高久 秀哉 貝塚 博行 田野井 智倫 東 和明 小田 竜也
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.468-472, 2020 (Released:2020-09-30)
参考文献数
10

症例は42歳,男性.自傷目的で,注型用ウレタン樹脂(2液型)の主剤と硬化剤を計約500mlを服用した.6時間後に独歩で当院救急外来を受診した.腹部所見に乏しく,樹脂の自然排泄を期待し外来経過観察とした.2日後の再診時に腹痛,食思不振を訴えた.上腹部正中に硬い腫瘤を触知した.圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は無かった.胸腹部骨盤CTで,食道下部から十二指腸球部にかけて蜂巣状でairの混在するlow densityの腫瘤を認めた.上部消化管内視鏡で除去を試みたが,硬いウレタン樹脂で除去は不可能であった.緊急手術を施行した.胃壁を切開し,食道下部から十二指腸球部にかかる硬化した型取りされたウレタン樹脂を分割して摘出した.主剤と硬化剤を混合攪拌すると硬化する注型用樹脂は,型取り用の資材として流通している.服用時は液体だが,体内で攪拌され硬化するため,外科的な摘出が必要になると考えられた.