著者
石田 健次 由木 雄一
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.241-247, 1996

島根半島沿岸のクロメの茎状部, 葉状部および付着器の季節変化を観察し, 大型個体の脱落を調べた。その結果, 葉状部は12~1月が最も短く, 4~5月に最も長くなったが, 新生側葉は1月に最も多く, 6~7月に最も少なくなり, 両者は相反した傾向を示した。<BR>一方, 茎状部の生長は同じ生育場で個々にかなりの違いがみられ, 一定の傾向を示さなかった。また, 仮根の発出は年1段, 10月~翌年4月に行われた。これより, 仮根の段数は年齢形質として有効で, 満年齢を表し, 群落内のクロメは寿命が6年前後と推定された。また, 茎状部断面では生長輪が観察されず, 生長輪を年齢形質として使用できなかった。汀線では9~12月にクロメの大量漂着がみられたが, クロメの付着基質からの脱落には波浪の影響よりも, この時期に固着力が低下することが関係していると考えられた。島根県鹿島沿岸のクロメ群落では, 3月に幼体が目視され始め, 9~12月に成体の脱落を毎年繰返すが, その群落更新の程度は年によって異なるものと考えられた。