著者
田子 泰彦
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.387-391, 2002-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
21

1985~2001年に神通川で漁獲されたサクラマスの年平均体重の変化を調べた。神通川で漁獲されたサクラマスの年平均体重は1992年までは約3kgであったが, 以後減少し, 1997年と2001年には約2kgまで小型化した。1997~2001年の年平均体重の平均は2.5kgで, 1987~1991年の平均値 (3kg) に比べ有意に小さかった。1991年までは0+秋季放流や1+スモルト放流に由来する回帰親魚に比べ天然魚や0+春放流に由来する親魚の平均体重は有意に大きかったが, 1992年以降では両者の大きさはほぼ同じになった。調査期間中に神通川で漁獲されたサクラマスの年平均体重 (y) と尾数 (x) の関係はy=0.000479x+2.16 (r=0.719, p=0.001) で示され, 漁獲尾数が少ない年は魚体も小さい傾向が認められた。神通川で漁獲されたサクラマスの小型化の要因としては, 海域における競合種の個体群の増大, サツキマスとの交雑および河川での漁獲による大型個体の選択的な淘汰の影響などが考えられた。
著者
田子 泰彦
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.137-142, 2002-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
24
被引用文献数
1

1991~1995年にサクラマスの生息域である神通川とその河口付近の海域において, サツキマスの出現状況を調べた。神通川ではサクラマスに混ざって多くのサツキマスが漁獲された。漁獲されたサツキマスの尾叉長分布は21.5~44.0cmの範囲にあり, サクラマス (43.5~70.0cm) に比べ著しく小さいことから, 海域での回遊期間は短く, その回遊範囲は狭いと推定された。神通川では尾叉長62.0cm, 体重3.2kgの大型サツキマス個体が漁獲されたことから, サクラマスとの交雑の可能性が示唆された。神通川の河口付近の海域で漁獲されたサツキマス・サクラマス全体に占めるサツキマスの割合は5力年では6.9~14.6%であった。同海域におけるサツキマスの尾叉長分布は16.0~46.0cmの範囲にあり, サクラマス (13.0~72.0cm) に比べ有意に小さい側に分布した。神通川のサクラマスの魚体の大きさを維持し, サクラマス資源を増大させるためには, 神通川に生息するサツキマスを排除し, さらなるサツキマス幼魚 (アマゴ) の侵入を防ぐ手だてを実施する必要があると考えられた。
著者
小坂 善信
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.271-287, 2017-09-20 (Released:2018-09-20)
参考文献数
130

The culture of scallops in Japan has a history of about 60 years. A major change was spat collection using an onion bag, which was invented by a fisherman in the 1960s and greatly changed the fishery production of scallops not only in Japan but the world. I will describe the general history of the scallop fishery in Japan and research that has supported the fishery and scallop culture.
著者
横川 浩治 井口 政紀 山賀 賢一
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.227-234, 1992-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

生態学的な知見の乏しいカサゴについて, 播磨灘南部沿岸海域を調査地区に選定して, その年齢と成長, および肥満度などに関する研究を行なった。相対成長に関しては, 香川県産カサゴの相対成長は九州産のものとかなり異なり, 成熟期の違いから考えても両者は別の系群である可能性が示唆された。耳石の輪紋数により推定された成長は, ほかの海域における知見と同様に, 雌は雄に比べてかなり成長が劣ることが明らかとなった。その原因としては, 雌は産仔期にかなりの栄養分を生殖腺に要求されるために肥満度が著しく低下するというサイクルを毎年くり返していることが考えられた。
著者
松永 順夫
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.20-26, 1974-06-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
6

1) 海水中の大腸菌群最確数 (これをMPNと呼ぶ) は経時的にも, また場所 (去岸距離別, 地理的, 水深別) によるわずかな違いによっても著しい差が生じた。2) MPNの経時的な変化は潮位と気象の経時的変化の影響と見られた。3) MPNは風波やCODと相関し, 風波で海底土が舞い上るにつれてCODとMPNの値が高くなった。4) MPNは風波の静かな時には潮位と負の相関をし, 干潮時に多く, 満潮時には少なかった。5) 海水中のMPNは沖合に行くにつれて減少し, 沖合1km以遠にはほとんどないが, 海底土中には3km以遠でも認められた。6) 河川水中のMPNは上流に少なく, 下流に多い傾向がある。しかし, 河口付近 (200m以内) の海水中や河口からの距離が遠ざかるにつれての傾斜的な減少傾向が見られなかった。7) 海水中に流入した大腸菌群の消長については急激な減少傾向が見られ, 3時間以内にほぼ全滅することが確認された。ただし, 1%ペプトン加海水や有機性汚濁物質を含む海水中では大腸菌群はむしろ増殖した。8) 海へ流入した大腸菌群のごく一部は海水中でも生存し, 特に有機性汚物の多い海底土中には多数の存在が認められた。しかし, 海水や海底土中に有機性汚濁物質がない場合には全く大腸菌群の存在が見られなかった。9) 上記のことから, 海水中のMPNを指標にした海水の汚染度調査および水質判定は充分可能である。ただし, 海水中の大腸菌群のMPNは陸水から海への大腸菌群の流入量を直接表わしていない。10) 本検査結果は, 海水中の大腸菌群の生存とする資料としての価値が高い。繁殖をどの程度許容する海洋環境であるかを判定
著者
紺野 香織 坂野 博之
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.121-126, 2010-03-20 (Released:2012-09-29)
参考文献数
21

ヒメマスの動物プランクトンに対する餌選択性を明らかにした。ヒメマスの胃内容物中には動物プランクトンのみが認められた。胃内容物中のプランクトン組成は環境水中の組成と異なり,大型のハリナガミジンコが優占していた。一方,環境水中で最も大型のケンミジンコに対して,選択性は認められなかった。以上のことから,ヒメマスは特定の動物プランクトン種を選択的に摂餌することが示された。過剰なヒメマスの放流は選択的摂餌を介して動物プランクトンの群集構造を改変し,ヒメマス資源に悪影響を与える可能性が考えられた。
著者
山崎 和哉 平山 拓弥 加納 光樹
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.41-47, 2019 (Released:2020-03-20)
参考文献数
31

北アメリカ原産のチャネルキャットフィッシュ(Ictalurus punctatus)は,日本の河川や湖沼で地域漁業に甚大な被害をもたらしている。本種の稚魚の季節的出現と生息場所利用を明らかにするため,2016年5月から11月の夜間に霞ヶ浦の沿岸帯で小型地曳網による定量採集を行った。複数のじゃかごで作られた離岸堤の付近で,5月から10月にかけて本種の稚魚計417個体(体長16~97 mm)が採集され,その出現盛期は8月であった。体長組成のモードは7月から9月にかけて24~36 mm から60~64 mm へと大きくなり,離岸堤付近に滞在し成長する傾向がみられた。稚魚の個体数密度は,ヨシ帯(底質は砂泥質)よりも離岸堤付近(砂質)で明らかに高かった。稚魚が離岸堤付近に蝟集する理由として,隠れ家としてじゃかごを使っている可能性や,砂底によって特徴づけられる緩やかな流れを生息場所として選択している可能性が考えられた。
著者
立木 宏幸 中川 武芳 田村 憲二 廣瀬 慶二
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.61-66, 1997-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
11

ニホンウナギにおいてE2の経口投与による雌化効果および成長について調査した。配合飼料による餌付けを完了した直後のシラスウナギに, 飼料1kgあたり10mgのE2を添加した試験飼料を投与した。対照区に比べE2を投与したすべての区で雌の比率が有意に高くなり, 餌付け直後からE2を4ケ月間投与した2区では雌の比率が97.0%と最も高い出現率となった。体重約200gまではE2投与の有無による明らかな成長差は認められなかった。しかし, E2を投与した雌魚ではさらに成長し, 2年4ケ月で天然親魚に匹敵する大きさに成長することが確認され, 本報告で示した方法により種苗生産用親魚の育成方法が確立された。
著者
示野 貞夫
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4-5, pp.263-275, 1972-12-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
34

家畜飼料中の炭水化物は全栄養素の50%以上を占め, 脂質とともにエネルギー源として重要な役割を有している。しかし, 動物性蛋白質に対する要求が強い魚類では, 多量の炭水化物の投与は有害であるといわれている。魚類栄養学はこの十数年間に急速に進歩し, マスなど2・3の魚類については, その栄養要求が明らかになりつつある。しかし, 炭水化物投与による成育不良の原因はまだ解明されていない。魚類は水中に生息する変温動物であり, また多くの種類があるので, 闇哺乳動物の糖代謝に関する知見を魚類にそのまま適用できない面もあり, 魚類の特殊性に応じた基礎的な研究が必要である。私どもは, 魚類の糖代謝の特性を明らかにするために, それに関与する酵素について一連の研究を進めている。ここでは, 糖代謝に関与する酵素の分布とその代謝調節の問題を中心に, 魚類の糖代謝に関する研究の現状を総括することとする。
著者
間野 静雄 淀 太我 吉岡 基
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.185-192, 2018 (Released:2019-09-20)
参考文献数
28
被引用文献数
4

庄内川下流の小田井堰堤がアユの遡上に与える影響を明らかにするため,堰堤下流,魚道,河川中流における CPUE の経日変化,耳石 EPMA 分析から推定した河川進入時期,ならびに体サイズの特徴を解析した。堰堤下流では4月5日に投網で初めてアユが採捕され,6月中旬に CPUE が最高値を示した。魚道では5月中旬まで採捕される個体がきわめて少なかったが,5月下旬に急増し,同時期に CPUE が最高となった。堰堤下流には河川進入後80日程経過している体長の大きな個体がみられたが,魚道では体長の大きな個体はみられなかった。また,河川中流の個体の河川進入時期は4月上旬が最も多く,堰堤下流では4月下旬,魚道では5月中旬であった。以上のことから,早い時期に庄内川に進入した個体のうち,停滞なく小田井堰堤の魚道を利用した個体は上流へ遡上するが,すぐに利用せずに停滞した個体は環境の悪い堰堤下流に定住してしまうと考えられた。
著者
浜田 篤信 菊地 章雄
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.91-100, 2020 (Released:2021-06-20)
参考文献数
26

ニホンウナギの海産および内水面産の種苗採捕量変動を利根川下流域の環境変化と対比させて検討した。1957~2015年の間の種苗採捕量は8回の上下変動を繰り返しながら漸減してきたが,それらが利根川下流域環境変化に関係していることを明らかにした。これらの情報から「ニホンウナギの減少は,利根川下流に建設された水門による本種の遡上・降河阻害による」とする仮説を構築し,この仮説を利根川下流域環境の利根川から離れた水域のウナギ漁量への影響およびウナギ漁獲量と2年後の種苗採捕量の関係の検討によって検証,有効であることを確認した。
著者
崔 相
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-24, 1963-05-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

1) 水槽内においては稚貝が最もよく動き回り, 成貝, 老成貝の順に動き方が弱くなるが, 特に老成貝は移動力が乏しい。2) アサリの移動運動は, 1.足を前方へのばし, その収縮, 伸長のくり返えしによる前進運動, 2.足を横または後方へ出し, のばした足を支点として体を押し出す, 3.方法2の飛躍形であって, 瞬間的に殻長の2~3倍の前進を行なう等の3方法がみられる。方法1は各大きさの貝でみられる最も一般的な動き方であり, 方法2, 3は主に稚貝, 幼貝においてみられ, 老成貝においては方法3による動き方は全くみられない。3) 天然漁場においても成貝と比べて幼貝の移動が活発であり, 幼貝の30日間における移動距離は砂質地帯 (生息環境が良好でない場所) では4.8~5.7m, 砂れき質地帯 (生息環境が比較的良好な場所) では, 1.4~1.5mであった。4) アサリは自力によって遠距離の移動を行なうとは思えない。しかし, 風波, 潮流など他動的な要因により, かなり広範囲の移動が行なわれることが想像される。5) アサリの土砂の堆積に対する抵抗性は弱い。砂に埋没されたアサリの浮上の難易は, 貝の大きさ, 埋没深度と密接な関係がある。6) 10cm埋没では底生初期稚貝と老成貝には斃死がなかったが, その他の貝では3~18%の斃死がみられ, 15cm埋没では, 貝の大きさに関係なく37~50%の斃死がみられ, 20cm埋没では稚貝, 幼貝, 成貝で63~97%が斃死し, 老成見では70~100%の斃死がみられた。7) 表層までの浮上時間は10cm埋没では幼貝, 成貝が5~9時間, 老成貝が12時間を要し, 15cm埋没では, 幼貝, 成貝が11~12時間, 老成貝が15時間以上を要し, 20cm埋没では幼貝, 成貝でさえ17~20時間を要した。8) 陸性浮泥を用いて, 殻長10~15mmのアサリを3, 6, 9, 12cmの深さに埋没した結果では, いずれの深さにおいても約2週間にわたってアサリには障害がみられなかった。
著者
藤岡 豊 福村 郁夫
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.69-72, 1984-09-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
7

1. 安息香酸エストラジオールの経口投与により, アユの雌性化について次の結果を得た.2. 各試験区において雌雄同体の個体が出現した.3. 安息香酸エストラジオール濃度0.2μg/gから雌性化傾向が見られ, 1.3μg/gと2.7/μg/gにおいては92~93%の雌性化が見られた.4. 生存率は安息香酸エストラジオールの濃度が高くなるにつれて, 低下する傾向を示した.5. 雌性化については安息香酸エストラジオール濃度1.3μg/gが, 最も良い結果を示した.
著者
橘川 宗彦 大場 基夫 工藤 盛徳
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.231-236, 2006-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
13

ワカサギ卵を水生菌の発生を抑え効率よく孵化させるため, 陶土を用いて不粘着処理した受精卵を高密度で収容できる孵化器を用いる方法と従来の屋外飼育池に敷設した着卵基質に付着孵化させる方法とで孵化管理の比較試験を試みた。孵化器では屋外飼育池に比較し今回の試験では約5分の1省スペース化され, 使用水量も約3分の1に節水された。発眼率では有意差は認められなかったが, 飼育池で観察された卵の脱落による減耗も孵化器では防止できたことや, 受精卵の収容から孵化までの死卵の分離除去が容易であり, 薬剤等を使用せずに水生菌の抑制ができる等の利点があった。一度に多量の受精卵収容作業では不粘着処理に多少時間を要するが, 不粘着処理した受精卵を孵化器に収容する新たなワカサギ受精卵の効率的な孵化管理法を紹介した。
著者
熊井 英水 今村 儀佐 中村 元二
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.211-218, 1983-03-25 (Released:2010-09-07)
参考文献数
10

マイワシ単一餌料を給与したハマチに対するDBT-HClの投与効果をみるため, 実験Iでは対照群の他に硝酸チアミン5mg, DBT-HCl2mg, 5mgを投与した合計4群を, 実験IIでは対照群の他にチアミン無添加のビタミン混合物投与群更にDBT-HCl2mg, 5mg, ビタミン混合物+DBT-HCl2mg, ビタミン混合物+DBT-HCl5mgの6群を設定し60日間飼育し次の結果を得た。1) DBT-HCl投与群の組織中チアミン濃度は投与量に対応した濃度を示した。2) DBT-HCl2mgあるいは5mgの単独投与群は実験Iおよび実験IIいずれにおいても顕著な効果を認めなかった。3) チアミン無添加のビタミン混合物の投与はへい死を予防した。4) チアミン無添加のビタミン混合物にDBT-HClを2mgまたは5mg併用すれば増体重が著明に向上した。5) マイワシ単一餌料の連続給与はチアミン欠乏症の他にそれ以外の餌料性疾患を併発すると判断した。
著者
中村 一雄
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.16-26, 1958-05-30 (Released:2010-06-30)
参考文献数
28

1) オイカワ卵の発育と水温との関係について実験をおこなつた。2) オイカワ卵のふ化は15.3℃と18.9℃の間から28.7℃と31.7℃の間が適温で, その範囲は相当広く, なかんずく18.9-27.4℃が最適温度である。3) オイカワ卵のふ化可能の低温の限界は11.0-15.3℃の間であり, 高温の限界は33.5℃前後である。4) オイカワ卵のふ化適温範囲内において水温 (θ) とふ化日数 (T) との関係はTeaθ=Kの公式に適合し, これよりaloge=0.5103, a=0.1175, K=1,705, Q10=3.24の値を得た。5) オイカワ卵のふ化日数と水温との関係は次のごとくである。 平均水温 (℃) 11.0 15.3 18.9 21.4 23.1 25.8 27.4 28.7 31.7 33.3平均ふ化日数 - 8.56 5.52 4.10 3.40 2.19 2.16 1.89 1.73 1.576) オイカワ卵のふ化日数と水温の相乗積はふ化適温範囲内においては水温の上昇するにしたがい減少する傾向がある。7) 千曲川におけるオイカワの産卵期の水温とオイカワのふ化適温とは一致する。8) オイカワのふ化稚魚の浮上水温は31.8-20.1℃までは適温範囲内にあつたが, 20℃以下は明らかになし得なかつた。 また33.6℃は適温外であつた。9) オイカワのふ化稚魚の浮上日数と水温との関係は適温範囲内においてはTeaθ=Kなる公式が適用できてaloge=0.032, a=0.0742, K=1.472, Q10=2.12の値を得た。10) オイカワのふ化稚魚の浮上日数と水温との関係は概略次のごとし。 平均水温 (℃) 20.1 22.0 25.9 27.5 28.8 31.8 33.6 平均浮上日数 6.8 6.3 4.6 4.1 3.4 2.8 2.411) オイカワのふ化稚魚の浮上日数と水温の相乗積は水温の上昇するにしたがい減少する。12) オイカワのふ化適温範囲はコイ, フナ, ワカサギと同じく広く, しかもメダカとともに最も高水温に適する種類である。13) オイカワは自然水域において16.7℃の低温まで繁殖する可能性があると考えられる。
著者
今井 正 出濱 和弥 坂見 知子 高志 利宣 森田 哲男 今井 智 岡 雅一 山本 義久
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.93-100, 2021 (Released:2022-03-20)
参考文献数
21

本研究の目的は長期間,硝化作用を有する熟成状態のろ材を保存するための安定状態を評価することである。密封して保湿状態にしたろ材のアンモニア酸化活性に及ぼす保存温度の影響を調査した。ろ材のアンモニア酸化活性を25℃で測定した後,これらを海水から取り出してジッパー付き袋に入れて,1~35℃の8段階の温度で180日間管理した。1℃で保存したろ材のアンモニア酸化活性は最初と同様であった。加えて,アンモニア酸化古細菌とアンモニア酸化細菌の現存量は,それぞれ14%と10%でわずかな減少であった。5~20℃で保存したろ材の活性は約50%まで減少した。活性のさらなる減少は25℃以上で保存したろ材で認められた。また,1℃で約3年間保存した場合でも,ろ材の活性が33%残っていることが示された。ゆえに,硝化作用を有する熟成ろ材の長期間保存のためのアンモニア酸化微生物の保持は,設定温度温度内では1℃で最も高かった。
著者
江草 周三
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.106-111, 1959-04-20 (Released:2010-06-30)
参考文献数
18