著者
甲田 優太 寺島 崇矢 澤本 光男
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.691-706, 2015-12-25 (Released:2015-12-25)
参考文献数
66
被引用文献数
1 1

近年筆者らは,一般的な親水性や疎水性とは異なる「フルオラス性」に着目して,リビングラジカル重合によりパーフルオロアルキルモノマーで機能化したミクロゲル星型ポリマーと両親媒性ランダムコポリマーを合成し,これらを用いて有機溶媒あるいは水に可溶なフルオラス性ナノ機能空間を創出した.フルオラスミクロゲル星型ポリマーは,有機溶媒や水中にてフルオラス性のフッ素多置換化合物を選択的に捕捉し,溶媒や温度の変化により捕捉ゲスト化合物を放出するナノカプセルとして作用した.また,ポリエチレングリコール鎖とパーフルオロアルキル鎖をもつ両親媒性フルオラスランダムコポリマーは,水中で動的なフルオラス性空間をもつ一分子折りたたみポリマーまたは多分子会合体を形成した.このポリマーは,細胞毒性が低く,タンパク質を固定化することも可能であり,新たなバイオマテリアルとしての応用が期待される.