著者
町田 淳 山本 二三子 早坂 晃一 熱海 明 石戸谷 武
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, 1973-06-25

症例は60才の男性肺癌に癌性心のう炎を併発し,心タンポナーデを惹起した.そのまま放置すれば,恐らく数時間ないし一両日中に死亡したと思われた.しかしこれに対して,心のう切開術を施行することにより,患者の苦痛を著しく軽減させ,また僅か45日間ではあったが,延命効果を得ることができた.野木によれば,悪性腫瘍の2〜15%に,心のう内転移を認めるという.この点からも,胸部X線所見,細胞診などにより,的確に診断し,適宜の治擦,特に心タンポナーデを起した癌性心のう炎に対して,心のう切開術を施得することは,有意義であると思われる.