- 著者
-
畑 礼子
- 出版者
- Japanese Association for Oral Biology
- 雑誌
- 歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.1, pp.118-122, 1972 (Released:2010-11-30)
- 参考文献数
- 6
- 被引用文献数
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基底頭蓋長が95~110mmの間にある, 永久歯列をもった野生のエゾタヌキ (Nyctereutes procyomides albus) 64例128顎を用いて歯牙の調査を行ったところ, 完全顎60例中35例に歯数の変化が見られた。このうち, 萠出後の変化を除くと, 先天的に歯数に異常が見られたのは27例であった。歯数異常のうち過剰歯はいずれもP3の位置に4例 (5顎) 出現した。さらに欠如歯で先天的に欠如していたと思われるのは, P1: 1例 (2顎), P2: 2例 (2顎), P2: 3例 (4顎), M3: 21例 (39顎) であった。P2, P2は前臼歯部における最前方にある歯という点で, またM3は, 咬合上の役割と顔面頭蓋 (吻) の短縮する傾同があるという点で興味ある所見である。さらに, 歯根の変化が観察され, 3根化がP3に8.8%, P4に1.6%, 2根化がM2に27.0%, 単根化がP2とM2にそれぞれ28.5%, 35.8%に現われた。これらの歯根の変化は, 咬合および歯数の変化と関連性があるものと思われる。