著者
畑中 千歳 小沢 潤二郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.421-428, 1966
被引用文献数
9

(1) ペクチン酸は温アルカリ溶液では安定であるが,ペクチンは不安定でtranseliminationによってすみやかに分解する.しかし低温になると反応は遅れ,0&deg;ではtranseliminationがほとんど起きないうちに,けん化が完了する.この際transelimination以外の原因による粘度の低下が認められた.<br> (2) CPGによるペクチン酸の分解限度は二重結合が多いほど低い.しかし二重結合を含んでいない, PEでけん化したのちアルカリ処理を行なってつくったペクチン酸の場合でも,分解ははなはだ不完全であった. CPGは不飽和ペクチン酸には作用しない.これらの結果はCPGはペクチン酸の非還元性末端から作用し,分子の中の中性糖類ばかりでなく,基質調製中に生成する非還元性末端の4, 5-不飽和ガラクチュロン酸によっても作用が阻止されることを示している.<br> (3) PEによるペクチンのけん化は不完全であると言われている.しかし温州みかんの果皮からつくったPEをペクチンに作用させ,けん化の度合をクロモトロップ酸法の改良法で調べると, PEでもアルカリ同様ペクチンの完全なけん化が起きることがわかった.